2008年10月19日日曜日

あとがき(第10号)

あとがき(第10号)


■高山れおな

冨田拓也氏の俳句九十九折は、名称も新たに新連載となるのかと思っておりましたら、そうではなく、連載名はそのままにしての第二幕の始まりということのようです。そういえば九十九折すべきところ、今号で八折したばかり。タイトルの額面通りなら、あと九十一折せねばならぬ道理です。そのうちAさん、Bさんの素性を明かす章も読んでみたいなあ。二人はどこに住む何者で、どういう関係なのでしょうか。 

青山茂根氏のエッセイに登場する詩人のS夫妻には、筆者もお世話になりました。S先生が亡くなって3年がたちます。青山氏の原稿を貰って、思いがけずお名前(イニシャルではありますが)を見て、こみあげてくるものがありました。 

IT弱者の高山ではありますが、少しはメンテナンスをお手伝いせんものと、この土曜日、中村安伸氏に拙宅に来ていただき、スキルトランスファーを受けました。全体の管理や最終的なアップ作業を中村氏が行うことに変わりはありませんが、負担を多少は分散できるようになったでしょうか。 

スキトラのあと、中村夫人の青嶋ひろのさんも合流して一杯やりました。青嶋さんは俳句にも詳しいライターで、先頃、板東寛司氏の猫の写真と五十三俳人の俳句とをとりあわせた『まだ恋じゃない』(九月二十五日刊 メディアックス)を出版したところ。猫&俳句好きの間で話題になった『逢いたくなっちゃだめ』、『誰かいませんか』につづくシリーズ第三弾(版元は異なりますが)です。猫は好きだが俳句は知らない人たちを読者に想定しての選句と鑑賞が新鮮。今号の拙稿の主人公である小川軽舟氏の青春俳句は、こんなふうに読まれています。 

マフラーに星の匂ひをつけて来し  小川軽舟 
冬の日の待ち合わせ。彼女をあたためるマフラーさえ彼には愛しかったけれど、そのマフラーからは「星の匂ひ」がした。よく知るはずの彼女の、未知の部分を知った驚きを、作者は表現しました。星の匂いが「ついていた」、のではなく「つけて来し」。彼女はきっと、彼の知らない香水をつけるように、「星の匂ひ」をわざとつけてきた。そんないたずら心に惑わされつつも、また愛しいと思ってしまう……季語は「マフラー」(冬)。
 

其角の『五元集』にある〈梅寒く愛宕の星の匂かな〉は、梅の香りを星の匂いに転じたところが手柄でした。片や軽舟氏の句では、恋人の香りを星の匂いにしてしまう心の昂ぶりに共感を覚えます、遠い記憶を探りつつ、ですが。両句とも、燦燦たる冬の星空のもとでの情景であること、これは言うまでもありません。 

私事になりますが、高山の第一句集『ウルトラ』の新装版(本体3000円)が出版されました。版元は原著と同じ沖積舎です。前回がプラスチックの函に入った上製本だったのに対し、今回はソフトカヴァーの並製本。パリ在住の写真家・小野祐次氏の写真を使って原著とは趣を一変させていますが、やはりかなりの美本ではあります。テキストは組版を含め、原著のまま変わらず。思えば、ちょうど十年前に出したこの句集がS先生とのご縁のなかだちでした。


■中村安伸

仕事上の必要から、秋葉原のジャンク屋でとあるパーツを探していたのですが、何でもありそうに思えるガラクタの山のなかに、私の探していたものはありませんでした。

今号の高山れおな氏の記事は、小川軽舟氏の評論集『現代俳句の海図』と句集『手帖』の二冊についてとりあげられたものです。

『海図』は池袋の某大型書店で買い求めることができたのですが、あちこちで話題になっている『手帖』のほうがなかなか見当たらない。ほうぼうの大型書店を見て回っても、ネット上の各書店を見ても取り扱われておらず、版元のウェブサイトにも紹介がありません。仕方なく版元にメールしたところ、なぜか「俳句研究」編集部からお返事を頂戴し、「鷹」編集部に問い合わせよとのことでした。

これから同句集を入手されようという方の参考となれば幸いです。

「鷹」編集部への問い合わせはまだ行っていないのですが、昨日高山氏のお宅にお邪魔した際、はじめて句集の現物を拝見することができました。話題を集めるだけあって、面白い句集だと思います。詳細は高山氏の記事をご覧ください。

 *

『ウルトラ』新装版、非常にかっこよいです。原著をお持ちの方にもおすすめしたいと存じます。


▲▲▲▲▲▲▲▲▲「豈」発行人からのお知らせ▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲
■「―俳句空間―豈」47号発行予定:10月中(今のところ特に変更なし)
■イベント:
 豈忘年句会:恒例の忘年会を兼ねた横浜吟行句会を「蛮」と共同で11月22日
(土)に予定。
  句会:波止場会館1F多目的室(大桟橋入り口/海岸通1-1)
/12時受付開始・1時出句締切、会費1000円
  懇親会:中華街「廣東飯店」/18時より/7000円
■同人の出版:
 大本義幸『硝子器に春の影みち』(沖積舎)10月30日刊/2800円
 貞永まこと、長岡裕一郎句集近刊予定。

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■関連書籍を以下より購入できます。







5 件のコメント:

青山茂根 さんのコメント...

『ウルトラ』新装版での出版、お祝い申し上げます(てのも少し変な言い方かも?)。

帯が倉阪鬼一郎さんなんですね。倉阪さんのブログで紹介されています。

ところで、
「復刊ドットコム」というサイトがあるのをご存知でしょうか?
p://www.fukkan.com/fk/VoteDetail?no=24453  (頭にhtt)

復刊の情報を提供すべきと思われますが如何に?

高山れおな さんのコメント...

青山茂根様

コメント有難うございました。
「銀化」十周年の由、それこそおめでたいというものです。
『ウルトラ』の帯文は、原著が出たおりに、倉阪さんが書いてくださった書評(場所は「幻想文学」だったかしら)の一節を使っております。

さんのコメント...

●「ウルトラ」前に頂いたのが、誰に貸したか、本棚の奧にはいっているのか、行方不明。いまではなかなかてにはいらなくなっている「当時の無名新人」の自費出版句集など稀覯本を一カ所にあつめて門外不出にしているのですが、面白いものは人に読ませたいたちの私には、よくこういうことがあります。初版はショッキングな赤い表紙の小数部でしたね。二冊あってもいいので、一冊買いましょう。

 鳥帰る日本さんざん遊ばれて  れおな、
でしたか。攝津 → 磐井 → れおな とつづいている、一種の風刺的俳諧。最近ますますみがきがかかってきたようですね。(摂津の俳句にはそれとはなかなか分からぬマヌーバーがあり、磐井の句はわかってやっている狷介さが在り、れおなの句は、あんがいまじめな述志の趣があったりして。(笑)。(印象批評、すみません。)


ところで、大本義幸句集『春の影みち』(沖積舎。二八〇〇円)ひろくよんで欲しいです。
「余命六年の間に三〇〇冊ウリたい」
(本人がそう言うんだから二〇年生き延びたとしても、そういっときます。)協力してあげてください。
 私、もうすぐ本誌に簡単な(最初は)アピール文、書評を投稿します。

もうひとつ
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すこし地味ですが、「できたときから古典の匂いのする」瀟洒な本です。
   大本義幸からの私信より 無断転載、*****************************

本人の私信に書かれてあったみごとな自己アピール。
このひとやはりある種の才能ですネ。
それから、病気に負けていない。自負のある人です。これが一番すごい。

 大本義幸という遅れてでてきた或いは早すぎた七〇年代俳句ニューウエーブは、じつは無名の位置から、時代の感受性と言うべきものをうけとめて、考えるべきいろんな課題を句のなかににぶち込んでいます。異色と言うべきですが、じつはきわめて正統な俳句の前衛精神の後継者、だと思うのです。
とまれ、豈創刊同人伝説の俳人の渾身の業績です。
れおなさん。やすのぶさん。どうぞよろしくご宣伝ください。

高山れおな さんのコメント...

吟様

大本義幸句集について、まさにこれから家に帰ったら書き始めようとしていたところ。小生は小生の観点で書きますので、吟さんは吟さんでよろしく。『ウルトラ』お買い上げくださる由、深謝。今回は、小生手元にはお配り出来る本はほとんど無いのです。版元になりかわり御礼申し上げます。

さんのコメント...

れおなさんが大本さんの句集について書いてくださるの?ああうれしい。ほんとに良い句集ですね。じんときます。いろんな人がいろんな角度から注目してあげるのが、彼の存在理由をたかめる、とおもいます。ミクシィには抄出したのですが、緊急に書かねばならないかな、と思っていました。こっちにさしせまった原稿があるので一安心しました。書評をたのしみにしています。ありがとう。