『新撰21』が出るぞ
・・・高山れおな
しばらくは腰を据えて書評をできる状態ではありません。仕事がいそがしいのが第一ですが、俳句の方でも先週末は「船団」のシンポジウムで京都に出かけ、今週末はとある本のための座談会でいっぱいいっぱいでした。「船団」のシンポジウムは、「百年後の俳句」をテーマにしたもので、「船団」の塩見恵介さんの司会のもと、おなじく「船団」の三宅やよいさん、「鷹」編集長の髙柳克弘さんと共にパネラーを務めました。これについては「船団」のホームページ「e船団」(http://sendan.kaisya.co.jp/ikkub09_0901.html)の「日刊:この一句」欄で、9月7日から10日にかけて塩見さんが、また、「週刊俳句」の9月13日号(http://weekly-haiku.blogspot.com/2009/09/blog-post_8675.html)では久留島元さんがレポートされていますので、そちらに譲ります。
さて、書評の代わりというのではないですが、上記「とある本」の刊行について、です。昨年末から、高山と「―俳句空間―豈」発行人の筑紫磐井、「天為」編集長の対馬康子の三名が編者となりアンソロジーの編集をすすめてきました。
今年中に達する年齢が満四十歳以下で、二〇〇〇年以前に句集出版や主要俳句賞の受賞歴が無いことを条件に、二十一人の俳句作者を選び、各人一〇〇句を寄せてもらいました。要は二十一世紀最初の新人たちの、計二千百句からなるアンソロジーということになります。題して『新撰21』。
一九八〇年代から九〇年代初頭にかけては、新人発掘のためのさまざまなシリーズ出版やアンソロジーの刊行があいつぎましたが、こうした企画はもう十五、六年にわたって途絶えており、それが俳句界の沈滞ムードの一因となってきました。これに一石を投じたのが、「澤」誌二〇〇七年七月号における「特集/二十代三十代の俳人」でした。本書はこの「澤」誌の試みにつづくものといえるでしょう。
本日(9月12日)の座談会はこの『新撰21』のためのもの。編者三人に加え、「澤」の小澤實主宰をゲストに迎え、収録の作家・作品について合評をおこないました。合評の模様は同書巻末に掲載されます。また、この合評だけでなく、個別の作家小論も四十五歳以下の中堅・若手の執筆者に書き下ろしてもらいました。座談会終了後は、版元である邑書林の島田牙城さん、記録担当の青嶋ひろのさん、装丁担当の閒村俊一さんともども飲み会となりましたが、なお熱気冷めやらず。徹夜で二千百句のゲラを読み込んできてくださったという小澤さんの鶴のひと声によって、作者の排列が逆転するハプニングも起こりました。つまり、編者・版元は、年齢の高い順に作家を並べるかたちで作業をすすめてきたのですが、これを若い順に組み替えることになったわけ。ささいなことのようですが、下に掲げる目次をご覧になれば、本としての印象がだいぶ変わることがおわかりいただけるでしょう。まだまだいろんな議論が出ましたが、まあこれはすべて余談。
さて、この座談会をもって、コンテンツが全て揃ったことになりますので、かくお知らせする次第。版元は今述べましたように邑書林、予価一八九〇円(税込)、刊行は十一月下旬を予定しております。刊行の暁には、みなさまふるってご購入願います。身びいきではなく、じつに多彩でおもしろい。俳句の未来が詰まった一冊になるでしょう。以下、目次です。
『新撰21』目次
越智友亮 十八歳
……作家小論 俳句を継ぐ者 by 小野裕三
藤田哲史 細胞膜
……作家小論 アスファルトの上の砂 by 榮猿丸
山口優夢 空を見る、雪が降る
……作家小論 叙情か屹立か by 佐藤郁良
佐藤文香 真昼
……作家小論 無人の風景を見る? by 小笠原鳥類
谷雄介 趣味は俳句です
……作家小論 自堕落詩人 by 飯田哲弘
外山一機 ぼくの小さな戦争
……作家小論 敗北者であろうとも by 佐藤清美
神野紗希 誰かの故郷
……作家小論 違和感という魅力 by 江渡華子
中本真人 庭燎
……作家小論 堂々たる伝統俳句の道 by 林誠司
髙柳克弘 ヘウレーカ
……作家小論 未来への遊弋 by 五島高資
村上鞆彦 水に消え
……作家小論 静かなる挑戦者 by 津川絵里子
冨田拓也 八衢(やちまた)
……作家小論 伏流水の滋味 by 横井理恵
北大路翼 貧困と男根
……作家小論 カリカチュアの怪人 by 松本てふこ
豊里友行 月と太陽(ティダ)
……作家小論 沖縄のビート by 高山れおな
相子智恵 一滴の我
……作家小論 美しき諧謔 by 甲斐由起子
五十嵐義知 水の色
……作家小論 きらめきを掬う平常心 by 大高翔
矢野玲奈 風
……作家小論 !Vamos, Reina, vamos!by 阪西敦子
中村安伸 機械孔雀
……作家小論 ジオラマの外側 by 青山茂根
田中亜美 雪の位相
……作家小論 Vintage1970 by 橋本直
九堂夜想 アラベスク
……作家小論 鷹揚なる献身 by 田島健一
関悦史 襞
……作家小論 《現実界(レエル)》のほかに俳句なし by 湊圭史
鴇田智哉 黄色い凧
……作家小論 消しとられた空 by 如月真菜
合評座談会……小澤實+筑紫磐井+対馬康子+高山れおな
(*)阪西敦子氏による矢野玲奈論タイトルの頭の方の「!」マークは正しくは天地逆です。
4 件のコメント:
お久しぶりでございます。
発刊をとても心待ちにしています。
贅沢な逸品ですね!
座談会、盛り上がられたとのこと。
見学に行ければ行こうかと思いましたけれど、参加できずに残念です。
できれば刊行お祝いに駆けつけたく存じます。
俳句界のひとつ石を投げられたような格好になるといいなぁと思っています。
俳人の方々の句を楽しみにしています。
野村麻実様
こちらこそご無沙汰しております。
ようやっとここまできました。
作品はもちろん、作家小論の方もみなさん頑張ってくださいました。きっと喜んでいただける本になると思います。
お忙しいとうかがっておりますが御身御大切に願い上げます。当方はブログを書く程には時間が無いというだけで、忙しいといってもたかが知れております。
俳句もさることながら短歌(というか和歌)方面でずぶずぶとやっている按配。それこそ「新古今和歌集竟宴」とか、そういう世界です。「新撰21竟宴」が実現すれば、是非お目にかかりたいものです。ではでは。
れおなさん、京都ではおつかれさま。
新撰俳人。関西からの作家は少ないけど、関悦史論で、湊さんが参加ですね。これは楽しみ。
近頃登場の新人と思っていたら、彼はわたしが知らなかっただけで、かなりまえから、マルチタイプの表現者として、幅広く詩歌を探求しています。英語堪能で海外の「俳句」に堪能というのが強い。
個々のメンバー、知らない人が何人か。(勉強不足かも知れませんが)。孫みたいに若い人もいるみたいで・・。
高山れおな様
お世話になっています。
沖縄の豊里です。
『バーコードの森』の大変立派な書評に続き、『新撰21』においても作家小論にてお世話になりました。
出版首を長くしてお待ちしてます。
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