■あとがき(第79号)
■高山れおな
週末にスーツを買いまして、考えてみるとこれは(喪服を別にすれば)じつに十七年ぶりのスーツ購入。つまり就職一年目以来ということです。社会人一年生は、当たり前ながらスーツをたくさん誂えます。
年のくれ破れ袴の幾くだり 杉風
なんていう古句もございますように、ふつうはその後も新陳代謝が続く(順次買い換えてゆく)ところ、わたくしの場合、就職二年目からはスーツをほとんど着なくていい(いいというか着ないで済ませている)部署に異動になり、スーツを全く購入しないままおそろしい歳月がたってしまったのでした。就職初年に買った大半は安物でしたが、いちおうちゃんとしたのが二着あり、さらにそのうち生き残った一着だけでもう長らくやり過ごしてきた(なにしろスーツ着用はせいぜい年十回くらいなもので)のでしたが、なんか急に新しいスーツが欲しくなったのです。次なる要検討物件は、壊れたままでもう五年ばかりになる書斎と寝室のエアコン。これも買おうか買うまいか迷っているうちに、十年くらいはあっという間に過ぎてしまうに違いありません。
ここしばらくは、大塚ひかりさんの『源氏物語』の新訳を読み上げ、かつ各所の展覧会を見倒すという二つの仕事を全うすべく、二宮金次郎と化して都下を徘徊しておりました。必然的に脳内源氏濃度は最高潮となり、俳句濃度は最低調。関さんが紹介している西澤みず季さんの
マッサージ機に腹揺れてをり十三夜
という情景と同じくらい(俳句的には)寒い寒い春の日々でございました。
■中村安伸
妻が現在バンクーバーに滞在中であり、私もテレビでオリンピックばかり視ているので、自然と生活時間があちらに同期してしまったようです。こちらの夕方が向こうの深夜、こちらの深夜がむこうの早朝にあたるため、夕方に眠り、早朝に目がさめるという生活になっています。
そんななか、18時半開演の能を観に行ったところ、ちょうど就寝時間にあたったため、睡魔との戦いは壮絶を極めました。結局負けてしまいましたが「魔」の字を生々しく感じました。
眠ってしまうと自分でも何をしでかすかわかりません。周囲の人々にご迷惑をおかけしていなければ良いのですが。
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