2009年8月23日日曜日

あとがき(第53号)

あとがき(第53号)



■高山れおな

今週は、「鬣TATEGAMI」同人の佐藤清美さんの新刊句集を読んでみました。かれこれ十五、六年の昔、大井恒行さんの編集で、『燿―「俳句空間」新鋭作家集Ⅱ』というアンソロジーが弘栄堂書店から刊行されました。書名にある通り、「俳句空間」誌の新鋭投稿欄の作者十六名の作品、各百句を収載したもので、佐藤さんも小生もそのメンバーでした。あまつさえ同じ一九六八年生まれの北関東人同士とあっては、同窓意識を持つなと言っても無理というものです。ちなみに十六人のうちでは他に、五島高資さんと岡田秀則さんが同年生まれで、前島篤志さんが翌一九六九年の生まれ。

と、かような感傷に耽っておりましたら、その前島氏から句集が届いたのには驚きました。句集といってもPCの出力を綴じただけの手製の冊子です。手紙がついていて、「四十にもなってコピー本をつくるところがエラい」と岡田氏から言われた、と記されていました(前島・岡田は俳句秘密結社「俳句魂」の盟友)。そうそう、句集のタイトルは『食傷』で、いかにもこの人らしい。ところどころに、短い日記風のエッセイが挿入されていて、これがまた滅法面白い。もそっと熱心にやってくれていたら、俳句界もホムホム級のエッセイストを持てたのではないか、と愚痴のひとつも出ます。作品はこんな感じ。

蚊柱のなかに刺青の男あり
いどばたの朴の木からは近きねはん
古池の無敵艦隊雪積もる
目隠しの両の指から天花粉
花柄が夜毎に育つ南風
灰色の靴下を手に熊のふり
水晶の木々狼の影が散る
湯のたまる間ガンマン二人死す
ああ言えばこう言うイエス初日の出
春暮れてジャングルジムの奥の子供
透明の男爵立てり雨の土間
蝉時雨蟻俺猿の順に死す


徹頭徹尾、お上品ぶりやセンチメンタリズムとは無縁の、逞しき俳諧でございましょう。



■中村安伸

今週は帰省中で、祖父の初盆のお供え物をバラして袋に詰め、近所や親戚に配り歩いたりしておりました。多忙というより気のゆるみでしょう、まったく記事執筆をすすめることが出来ませんでした。そのようなわけで今週はお休みいたします。


0 件のコメント: