2009年8月30日日曜日

あとがき(第54号)

あとがき(第54号)


■高山れおな


「鷹」の九月号は、小川軽舟主宰の『現代俳句の海図』の特集で、同誌内部の二氏に加えて、磐井師匠が、

「若手世代」論の総決算
――『現代俳句の海図』の現代史的位置

と題しての一文を寄稿している。一九八〇年代の俳壇における若手発掘ブームのあたりから筆を起こして、収録された十本の作家論についても満遍なく目配りして、読ませる書評になっている。しかし、その終盤はなかなか不穏。ラスト走者の岸本尚毅を小川が〈苦もなく論じている〉のは、〈小川にとって岸本が理想の俳人だからではないか。〉などとあって、いかにも愉しそうに挑発しているのだ。ここから師匠はさらに筆を転じて、昭和三〇年世代とは本質的には「岸本尚毅以前」なのだと述べている。

岸本以外の名前を入れれば、長谷川櫂・夏石番矢・小澤實・田中裕明・岸本尚毅世代といえるかもしれないが、要は岸本尚毅をメルクマールとし、それ以下を切り捨てて現俳壇の「若手世代」論は成り立っている。

状況認識として妥当かとは思うものの、こう改めて文章化されてみるとなんで岸本尚毅がそれほど重要な作家なのか、不思議といえば不思議な気もする。さて、挑発はまだ終わらない。文章は最後に、こう締め括られるのだ。

岸本尚毅以後論はどうなるのか、ヒントはこの本の付録の年表にある(二一四頁)。

一九六一年 一月五日 岸本尚毅、岡山に生まれる。

      二月七日、小川軽舟、千葉に生まれる。

『海図』は誰かが言ったような、団塊の世代や前衛俳句を切り捨てた戦略的現代俳句史ではない。新しい英雄の登場を語ろうと意図した新『サガ』なのであった。

軽舟氏がこのそそのかしを真に受けるような軽忽な人物ではないことは織り込んだ上での記述であるから、その限りでは悪意の文章ではなかろうが、しかし善意の文章でもありませんね。だいたい、この「誰か」とはわたくしのことなんでしょうし。しかし、考えてみると、師弟共々この本に走らされているとも言えるわけで、いずれにせよ近来最も人騒がせで面白い俳書であったのは間違いないでしょう。

・・・と、「あとがき」こそ長く書きましたが、原稿はお休みします。十月半ばまでは、執筆は断続的になりそうです。


■中村安伸

前号をリリースした先週日曜日はちょうど帰省していたのですが、堀本吟さん、堺谷真人さん等、関西の豈同人の方々と、そのお仲間、総勢15人ほどのメンバーで、芦屋の虚子記念文学館を見学いたしました。地下の会議室を借りての句会も非常に充実し、楽しい一日を過ごさせていただき、みなさまに感謝です。お土産にホトトギスの句帖を購入いたしました。今使っている句帖が尽きたら、それを使用する予定です。

本日リリースされた「週刊俳句」に、現代俳句新人賞の「落選展」が掲載されています。メンバーは堺谷さん、岡村知昭さんと私、全員豈同人ですね。

さて、私の記事についてですが、時間がなかったわけではありませんが、どうも書きにくい箇所にさしかかっているようです。気分転換にはじめたtwitter小説の執筆に熱中してしまったりということもあり、今回も休載とさせていただきます。


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